【C105下書き】IN-16の本序章

※※この記事は冬コミ(C105)の新刊の下書きです。新刊では文章や写真が変更・追加されます。また、この記事は予告なしに公開停止することがあります※※

この本は、旧ソ連製のニキシー管 IN-16 についてまとめようというものです。

IN-16は筆者が設計・販売するニキシー管時計やニキシー管ガジェットに使っているニキシー管で、筆者はすでに1000本以上を取り扱っています。IN-16を多数扱う中で、特に時計向けに外観の揃った個体を選別する中で、どうもこのIN-16には細かい違いのある個体が多数存在しているのでは、という疑念がわきました。

そこで、手持ちのIN-16について、そして疑念がわいてから新たに入荷したIN-16について、細かく調査を進めました。その結果、やはり多くの種類が存在し、かつ管に印字されている日付の時期が近いと形態もほぼ同じであることがわかりました。

筆者のニキシー管時計はニキシー管の外観をなるべく揃えて製造しています。このときに、「IN-16の外観のまとめ」のような資料があるととても便利です。しかしネット上にはそのような資料は見当たりません。臆測ですが、書籍としても存在していないか、存在していたとしても入手は困難でしょう。ならば、ここに多数のIN-16を持っている自分がつくるしかないのでは、というのがこの本のきっかけです。

IN-16は扱いやすい大きさで、表示もくっきりキレイで読みやすく、初期不良を起こす個体を除けば寿命も非常に長い、とても優秀なニキシー管です。個人的にもお気に入りです。そんなIN-16に愛をこめて、まとめられることをキレイにまとめ、これを参考にすればより大切に使ってあげられる、そういう資料にするのがこの本の目標です。(同人誌っぽいでしょう?)

この本でまとめる情報について

この本に記載してまとめる情報は、すべて筆者の観測に基づくものです。これまで観測したIN-16は高々1000本程度です。製造元の公式資料を入手したりはしていません(できればしたいです)し、すべてを知る関係者にインタビューしたりも(これもとてもしたいですが)していません。したがって当然ながら、情報には穴があります。

穴がある以上、推測または臆測で記述しなければならない箇所も多数あります。そのような箇所は読んでいてもどかしいところもあるかもしれません。しかし不正確な情報を記載したくはないので、ご了承ください。

正確な情報が今後手に入ったらもちろん、改訂またはブログ等による補足によって、穴埋め・修正を行っていきます。ただ、IN-16は製造が終了してからすでに30年が経過していて、入手も年々難しくなっています。私だけの力では今後穴を埋めることは難しいかもしれません。もしこの本で穴になっている情報、また手がかりになりそうな情報をお持ちでしたら、ぜひお知らせください。精査の上、その後の改訂で取り込ませていただきます。

IN-16基本情報

IN-16は、旧ソ連のニキシー管のひとつです。「ニキシー管」というのは本来商標なので旧ソ連のものをニキシー管と呼ぶのは厳密には正しくないのですが、一般化しすぎているので、いまさら気にする人もいないでしょう。要するに、ネオンガスのグロー発光により数字や文字を表示する電子管です。

旧ソ連の表示管はいろいろあるのですが、ニキシー管方式はIN、他の方式(蛍光表示方式など)はIVで始まる型番がつけられています。IN-16はサイドビュー型、つまり管を鉛直方向に立てて、水平方向から数字を読むタイプの管です。INシリーズの数字を表示するサイドビュー管は他にIN-14やIN-18がありますが、IN-16はその中でいちばん小型のものです。管の直径は約13mm、表示する数字の高さは約13mmです。

直径13mmというのはニキシー管にとっては標準的なサイズです。BurroughsのB5750系や日立のCD81、東ドイツのZ590M等、同じ直径のニキシー管は多数存在しています。これらの管には数字の左右に小数点(ドット)があるものが多く、IN-16もこの通り数字の左右に小数点があるので、機械的・機能的に互換性をもつよう設計・製造されたものかもしれません。(ピン配置は異なるので単純な置き換えはできません。)

直径13mmのニキシー管の例

IN-16は他の同サイズのニキシー管同様、電卓や計測器に多く使われました。1970年台から1990年台の長期にかけて大量生産され、その間に細かい仕様変更が重なり、冒頭で挙げたような「個体差」がたくさん生まれたようです。

IN-16の基本情報だけでももっと掘り下げたいところはたくさんあるのですが、ひとまずこの個体差を見ていきましょう。