※※この記事は冬コミ(C105)の新刊の下書きです。新刊では文章や写真が変更・追加されます。また、この記事は予告なしに公開停止することがあります※※
IN-16は1970年台(もしくはそれより昔)から1990年台まで、20年以上にわたって製造が続けられましたが、その間全ての個体が全く同じ仕様で製造されたわけではありません。時期によって、いろいろな部分の仕様が微妙に異なります。おそらく、管そのものの性能の向上、製造プロセスの効率化やその他いろいろな都合で仕様変更が行われたものと推測できます。ここでは、変更が行われた部分のバリエーションと、その時期をリストアップします。
※ここで挙げるバリエーションは、筆者が実際に入手した個体または信頼できるインターネット上の写真で確認したものです。製造されたすべての個体について把握しているわけではありません。ここに挙げられていないバリエーションを発見された場合は、お知らせいただけるとうれしいです。
フォント
最も大きな変更点が表示される数字の形、つまりフォントです。IN-16のフォントは3種類あり、製造初期に2度変更されています。
- フォントA: 1971年頃
- フォントB: 1972年~1975年頃
- フォントC: 1976年頃~
流通しているほとんどの個体がフォントCのため、フォントAやフォントBの個体を見たことのない方も多いと思います。フォントAとBはよく似ており、前後に並べたときに重なる部分が多く、総合的な視認性のために改良したのだろうと予想しています。
陽極の形状
次の変更点は数字の前にある陽極の形状です。こちらは最もバリエーションが多く、6種類もあります。
- スダレ: ~1972年頃
- ハニカムA: 1973年頃~1974年頃
- ハニカムB: 1974年頃~1975年頃
- ハニカムC: 1976年頃~1983年頃(ハニカムDの時期を除く)
- ハニカムD: 1978年頃~1979年頃
- ハニカムE: 1982年頃~
こちらもほとんどの個体がハニカム形状の陽極を採用しているので、スダレ形陽極の個体を見たことのない方は多いと思います。面白いのは、いったん採用したハニカムDが短期間で終了し、ハニカムCに戻っている点です。別の問題があったのか、それとも工場の都合か…。
円板の位置
管内にある円板状のパーツの位置も変更されています。これは3種類です。
- 管上部、水平方向: ~1975年頃
- 管上部、垂直方向: 1976年頃~1989年頃
- 管背部、垂直方向: 1989年頃
この円板はおそらくゲッターで、ニキシー管の中のガスの状態を安定させるために入っています。この円板、管上部の固定が外れて管内に脱落してしまっている個体をまれに見ます。最終的に背部に移動したのは、より強固に固定して脱落を防ぐためだと思われます。特徴的なのは、垂直方向に変更された時期とフォントCが採用された時期が同じという点です。水平方向の円板+フォントC、あるいは垂直方向の円板+フォントB、という個体は見たことがありません。この時期に仕様が一新され、製造設備も更新されたのかもしれません。
陰極のスペーサー
数字の形をした陰極それぞれが接触しないように間隔をあけて固定するための部品です。これは2種類あります。
- 白色: ~1977年頃
- ピンク色: 1977年頃~
この切り替えは一斉に行われたわけではなく、1977年中盤に次第に行われていったようです。そのため、同じ時期の個体でも、白色のもの、ピンク色のもの、はたまた一個体の中に白とピンクが混ざったもの、と様々存在しています。
小数点の形状
数字の左右についている小数点の形状です。これも2種類です。
- 丸形: ~1982年頃
- 角形: 1982年頃~
これは形状を単純化してコストダウンしたものかなと思います。小数点は小さいので、点灯したときの雰囲気はあまり変わりありません。
日付の印字
ニキシー管の「中身」のバリエーションは以上です。あとひとつは、管の背中に印字してある製造日(と思われるもの)を示す文字です。これは主に3種類あります。
- 月(ローマ数字)⦿年(アラビア数字): ~1977年頃
- 例: VII⦿76 X⦿77
- 月(アラビア数字)⦿年(アラビア数字): 1977年頃~1986年頃
- 例: 05⦿78 12⦿85
- ⦿年月(すべてアラビア数字): 1987年頃~
- 例: ⦿7812 ⦿9204
主に、と書いたのは、このフォーマット以外の全く違う印字が存在するからです。これは別途紹介します。⦿はこの文字通り、中黒を円で囲ったマークです。これはIN-16を製造していたガゾトロンという会社(?)の識別マークのようです。
まとめ
仕様変更の一覧を以下の表にまとめます。すべての仕様を組み合わせて総合した個体としてみると、10種類以上の個体が存在していることになります。
たくさんの種類があるように見えますが、特に点灯状態において見た目が大きく変わるのは1976年のフォント変更です。この前後の個体を混ぜて使わなければ、大きな違和感を感じることはないでしょう。
とはいえ見た目の違和感は主観的なものなので、実際にどれほど違うのか、次は部品ごとのバリエーションを、写真をメインに紹介します。