ニキシー管って何?よくある質問と答え

q61.orgではここ数年ニキシー管をよく扱っています。イベント等でニキシー管の本やガジェットを展示販売していると、「よく聞かれる質問」があるので、まとめてみました。

点灯している日本製のニキシー管

Q1. ニキシー管ってそもそも何ですか?

50年~60年くらい前に主流だった表示器です。約170V以上の電圧をかけると電極の周りのガスがオレンジ色に光って、電極の形に応じて数字や文字を表示します。0~9の数字の形の電極が封入されていることが多く、数値のデジタル表示に使います。独特の雰囲気が魅力的です。

登場当時は電子的にデジタル表示を行える表示器がほかに電球くらいしかなく、いろいろな用途に使われたようです。電圧計や周波数計等の計測器、電子計算機、自販機の金額やタイマーの表示、タクシーメーター等、業務用の機器が主でした。私が初めてニキシー管を見たのも、田舎の駅の古い券売機でした。

構造が複雑だったり特許料の支払いが必要だったりで高価、駆動に高電圧が必要、といった理由で、その後登場したVFDやLEDに置き換えられていきました。

Q2. 真空管ですよね?

広義にはそうですが、正確には真空管ではなく、ガス封入管です。ガラス管に電極が封入されている、という見た目は真空管とそっくりですが、真空管の中身がその名の通り真空なのに対して、ニキシー管の中身はネオンガス等の貴ガスです。このガスを通じて放電して使うので放電管、放電による光で文字表示を行うので表示放電管とも呼ばれます。(「ニキシー管」はもともとは商標です。)

ガスが入っている証拠に、プラズマボールやテスラコイルにニキシー管を近づけると、管内のネオンガスが反応して光ります。真空管はプラズマボール等に近づけても光りません。

中身が真空の真空管で表示用途に使われる管には、次の回答で出てくるフィラメント管や、青緑の表示が特徴的で現在も大量に生産されているVFD、20年くらい前までどこにでもあったブラウン管などがあります。

Q3. 電球と同じ仕組みで電熱線が光ってるんですよね?

いいえ。電球とは発光原理が全く異なります。 電球は中の電熱線を白熱させて光りますが、ニキシー管の中で光っているのは電極の周囲のネオンガスで、グロー放電という現象を利用しています。仕組みとしては、節電タップのスイッチの中でオレンジ色に光っているネオンランプと同じです。

点灯中のニキシー管をよく観察すると、電極そのものは光っていなくて、光るガスの中に暗く見えるのがわかります。ガスの光る領域は、電極の幅の数倍くらいの太さです。この性質のおかげで、ニキシー管の奥の方にある数字も、光が手前の数字の電極に邪魔されすぎず、よく見えるのです。

ニキシー管内で光っているガスのその中に暗く見える電極(陰極)
光るガスの中に暗く見える 8 の電極

電球と同じように電熱線を白熱させることで表示を行う管もあります。これは「フィラメント管」や「ニュミトロン」等の名前で呼ばれています。これらは電極自体が光り、電極を前後に重ねると奥の数字が見えなくなるため、ニキシー管と違って7セグメント表示式です。フィラメント管を「ニキシー管」といって(偽って)販売していることもあるので気をつけてください。別物です。

ニキシー管とフィラメント管の比較。フィラメント管のほうがシャープに光る。
左:ニキシー管  右:フィラメント管

Q4. もう生産してないんですよね?

大規模な生産についてはその通りです。1990年代で終了しています。いま手に入るニキシー管は、ごく一部の新規生産品を除いて、1990年代までに生産されたもののデッドストックか中古品です。

しかも、1990年代まで生産していたのは旧ソ連圏のみで、日本を含むほかの地域ではもっとずっと前に生産終了しています。いま見かけるニキシー管は旧ソ連製ばかりなので「ニキシー管といえば旧ソ連」と思いがちですが、単に旧ソ連の在庫数が多いだけで、実際はそんなことはありません。日本や欧州でつくられたニキシー管は非常に繊細かつ加工精度が高く、とても綺麗に光ります。このページのいちばん上の写真が日本製のニキシー管です。

Q5. まだ手に入るんですか?いくらくらいですか?

eBayという海外のヤフオクみたいなサイトがメインの入手先です。ソ連時代にロシア等で大量に生産された在庫が、それらの国から直接、まだ豊富に新品で手に入ります。

種類を問わなければ1本$1.5くらいから手に入りますが、もう生産していないので、在庫の減少に伴って年々相場が上がってきています。特に人気のIN-14というニキシー管はここ数年で相場が倍くらいになり、1本$10未満で手に入れるのが難しくなってきました。(2019年8月現在)

ほかの電子部品と同様に、1本だけ買うよりも10本や100本まとめて買うほうが1本あたりの値段は安くなります。中古品も新品に比べるとお手頃です。ちなみに、日本製のニキシー管はもう枯渇していてほとんど手に入りませんが、根気よく探せば中古品ならまだ手に入ります。お値段は言わずもがなです。

人気で高騰しているIN-14ニキシー管
最近人気で相場が高騰している IN-14 ニキシー管

Q6. 寿命はどれくらいですか?

使い方を間違えなければ、10年以上の寿命があります。ニキシー管全盛期のアメリカの管には 20万時間 の公称寿命を持つものが多くあります。ソ連製のものは公称寿命は短いのですが、10年以上元気に点灯し続けている例がたくさんあります。仕組み自体にあまり消耗する場所がないので、基本的には長寿です。

一方で、使い方を間違えると驚くほど寿命が縮まったりもします。ニキシー管の寿命は流す電流量が影響するらしく、過電流状態で使うと半年程度で寿命が尽きたりするようです。

Q7. 寿命がくるとどうなるんですか?

点灯させていると電極が少しずつ原子レベルで散らばって、ガラス管の内側に付着します。スパッタリングという現象です。程度が進むとガラス管が銀色にメッキされて、ガスの発光が見えづらくなってきます。全く見えなくなったら寿命です。通常、この現象はとてもとてもゆっくり進むので、1~2 年程度では付着の様子は全くわかりません。電球ではないので、寿命がきたら突然点灯しなくなる、ということはありません。

ニキシー管を過電流状態で点灯させ続けると、スパッタリングが急激に増えるといわれています。すると半年くらいでガラス管のメッキ状態がひどくなって表示が見えなくなったり、最悪の場合、電極がスパッタリングで完全に溶けてしまったりするようです。実際にそういう状態になってしまったニキシー管を持っています。

もっとも、スパッタリングで寿命が尽きるよりも圧倒的に多いのが、振動や衝撃でガラス管の封が破れてしまい、管内のガスが抜けたり空気が入って混ざったりして点灯しなくなる故障だと思います。ニキシー管はガラス製品なので当然ですが、激しい振動・衝撃は厳禁です。

割れてしまったニキシー管
割れてしまったニキシー管。寿命が尽きるより割ってしまう方が多いはず。

Q8. 熱くないですか?消費電力が大きいと聞きましたが?

ほんのり温かいかな?くらいで、熱くはないです。ガラス部分は触っても大丈夫。サーモグラフィーカメラでみるとだいたい40℃以下です。

消費電力もそれほどではありません。ニキシー管の駆動電圧は 170V と高いのですが、必要な電流が 数mA なので、1管あたり消費電力は小型管なら200mW ~ 400mW 程度、大型管でも 1W 程度です。

1WというのはパワーLEDと同じくらいです。最近は昇圧回路も高効率のものができますので、小型のニキシー管時計などはUSBバスパワーでも余裕で駆動できます。

ニキシー管時計のサーモグラフィー画像。ニキシー管の温度は36.5℃。電源回路の温度は41.2℃。
ニキシー管時計のサーモグラフィー画像。ぜんぜん熱くない。

Q9. 生産が復活したと聞きました。また安く手に入るようになりますか?

はい、そしていいえ、です。

生産は小規模に復活しています。チェコの Dalibor Farny さんが有名で、webサイトでは新製のニキシー管の販売も行われています。他にウクライナでも小規模生産が復活していて、こちらのwebサイトで販売されています。日本でも
ゆな でぃじっく さんが生産を研究されています。

しかしながら、また安く手に入るようになることはないでしょう。もともとニキシー管は構造が複雑なために高価です。ニキシー管全盛期にも家庭にまでは普及しなかったのはニキシー管が高いからなのです。一時期安かったのは、需要がなくなり在庫が大量に余ったからで、安く生産できるようになったからではありません。

さらに、小型のニキシー管は現代では入手困難な軟質ガラスが必須で、もともとつくるのが難しいニキシー管に輪をかけてさらに復活生産が困難だと聞きます。いま豊富に手に入る旧ソ連製小型ニキシー管が枯渇したら、もう小型ニキシー管が手に入ることはなくなる、と思ったほうがよさそうです。

あくまで「現状を踏まえると」ですが、今後ニキシー管が今より入手しやすくなったり、今より安くなったりすることはないでしょう。欲しいと思ったら、いまのうちに入手しておくのが最善です。

旧ソ連のニキシー管たち
旧ソ連のニキシー管たち。再生産可能なのはいちばん右の大型管だけ。

Q10. シュタゲ?

はい。

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